今回から「老人ホームを知る」として10回のシリーズで解説していきます。初回は「老人ホームとは」になります。
是非一読くださいませ。
第1回 老人ホームとは
「そろそろ老人ホームを考えようか」。親の物忘れが増えた、一人暮らしが心配になった・・・そんな小さなきっかけから、この言葉が家族の間に登場します。しかし多くの人は、老人ホームが具体的にどんな場所なのか、実はよく分かっていません。なんとなく「介護が必要になったら入る施設」というイメージだけが先行し、いざ調べ始めると情報の多さに圧倒されてしまう人も少なくありません。インターネットで検索すれば無数の施設情報や体験談が出てきますが、かえって何から手をつけていいのか分からなくなったという声もよく聞きます。
老人ホームとは、高齢者が生活の支援や介護サービスを受けながら暮らす施設の総称です。ここで「総称」という言葉がポイントになります。実際には、自治体や社会福祉法人が運営する公的施設もあれば、民間企業が運営する有料老人ホームもあり、対象となる要介護度や費用、サービス内容は施設ごとにまったく異なります。同じ「老人ホーム」という言葉を使っていても、家族それぞれが思い浮かべているものが違う、ということも珍しくありません。祖父母の代の記憶にある古いイメージの施設と、今の多様化した施設のあり方には、大きな隔たりがあることも意識しておきたいところです。
老人ホームを検討し始めるタイミングも人それぞれです。要介護度が上がって在宅介護が難しくなってから探し始める人もいれば、まだ元気なうちから将来を見据えて情報収集をする人もいます。実は後者の方が、選択肢の幅が広く、納得のいく決断をしやすいと言われています。介護度が上がってから慌てて探すと、条件に合う施設が限られ、比較検討する時間もないまま契約してしまいがちだからです。特に人気のある施設ほど、空きが出るまでに数ヶ月から数年を要することもあり、「必要になってから探す」という発想そのものが、選択肢を狭めるリスクを孕んでいます。元気なうちに複数の施設を見学し、パンフレットを集めておくだけでも、いざというときの心理的な余裕はまったく違ってきます。
もう一つ大切なのは、老人ホームは「終の棲家」だけを意味するわけではないという視点です。リハビリのための一時的な入所や、自立した生活を楽しむための住まいとしての性格を持つ施設もあります。つまり老人ホームとは、人生のある段階における「暮らしの場」の選択肢の一つなのです。介護が必要になったときの最終手段としてではなく、ライフステージの変化に応じて選び直せる住まいの一つとして捉え直すことで、検討そのものへの心理的なハードルも下がっていくはずです。「入れる」ではなく「選ぶ」という主体的な姿勢で向き合うことを、このシリーズを通じて大切にしていきたいと思います。
実際に検討を始める際は、家族の中で誰が「窓口」になるのかを決めておくことも意外と重要です。複数の子どもがそれぞれ別々に施設へ問い合わせたり、聞いた情報が食い違ったまま話が進んだりすると、後になって「言った・言わない」のトラブルに発展しやすくなります。情報を一元管理する担当者を決め、定期的に家族で共有する場を設けておくだけでも、検討はぐっとスムーズになります。また、本人が検討の輪に加われる段階であれば、できる限り早いうちから一緒に考えて本人の意思を出来るだけ尊重したいところです。後から「知らないうちに話が決まっていた」と感じさせてしまうことは、本人の尊厳を損ないかねません。
次回は、施設を検討する前に多くの家族が直面する「在宅か、施設か」という悩みについて考えていきます。
【執筆】
株式会社CareNation開発部








